昨年の9月11日、福島県双葉郡楢葉町前原浜城地区に十一体目となるお地蔵さんが建立されました。
福島第一原発の事故により避難エリアとなった同地区には震災時に十九の世帯がありましたが、十七の住宅が津波で流失。二名の方の尊い命が奪われました。加えて同地区は住宅の再建ができない危険区域指定のため、地域の方々はいわき市など近隣で新たな暮らしをスタートさせており、失われたかつての街並みは楢葉町の新たな産業として推進されているサツマイモ貯蔵庫や浜街道へと姿を変えています。
今回再建にあたった地蔵堂。300年前に溺死した子供達を供養するために建てられ、海に程近い場所にありましたが、石造りの土台部分が奇跡的に残り、震災前の同地区の暮らしの記憶を呼び起こす数少ない証の一つとなっていました。震災から10年を経た2020年。散り散りとなったかつての住民の方々がまた集まる場が欲しいとの要望からこの地蔵堂再建のプロジェクトがスタート。
再建にあたっては、記憶を紐解き、地蔵堂の中に安置されていた木彫りの地蔵を再現すべく、十九世帯が一堂に会し自らの手で地蔵を彫ることとなりました。
地蔵堂近くの徳林寺さんを会場に三回にわたるワークショップの末に完成したお地蔵さん。鯉や本やショベルカー等それぞれの家の仕事にゆかりのあるものを手に持たせ、石のお地蔵さんとともに再建された地蔵堂に安置されております。
(事務局長・米本)